毎年2月の初めごろから多の人を悩ませる花粉症。
「花粉症」の原因には色々な植物の種類があります。
特に日本で花粉の飛散量が多く罹患者が多いのが「スギ」と「ヒノキ」の花粉症です。
TVのニュースではこの時期になると、杉の木の葉っぱから花粉を振り撒いている様子が放映されます。
「いっそ木を全部切っちゃえばいいのに」
なんて極端な意見も耳にしますが、実はスギやヒノキは日本の暮らしに欠かせない役割も担っています。
2026年3月時点の情報をもとに、なぜ日本にはこれほどスギやヒノキが多いのか、そして花粉を減らすためにどのような対策が進められているのか、その実態をわかりやすく整理しました。
1、スギとヒノキ『樹木編』
「スギ」と「ヒノキ」は日本に自生または人工的に植樹された樹木です。
植樹されたものは、「森林」とも言われる地方の山林に多く植栽され、15〜30m程の高さ(樹高)まで成長します。
日本の森林とスギ・ヒノキ
日本は世界でも有数の森林大国です。
林野庁の統計によると、日本の国土面積(約3,779万ヘクタール)の約66%にあたる約2,502万ヘクタールが森林で占められています。
その森林のうち、人の手で植えられた「人工林」の森林面積は約1,009万haにのぼります。
さらに、この人工林の約7割がスギとヒノキです。
つまり、日本の国土全体の約19%に相当する面積が、スギやヒノキの人工林ということになります。
多くのスギ、ヒノキが人工林に植えられたのには理由があります。
スギやヒノキは真っ直ぐに比較的早く育ち、加工しやすく丈夫であるため、古くから現代まで建築資材として重宝されています。
戦後の復興期や高度経済成長期には、多くの住宅需要に応えるために国を挙げて植樹が推奨された歴史がありました。

落ちて茶色になったスギの葉っぱキャンプでの焚き付けに最適!
立体的な葉の形をしているので、重ねたときに空気層が生まれて火がつきやすくなります。
私は花粉症ですが、アウトドアの場面では頼もしい存在だったりするのでスギが好きです。
2、スギとヒノキ『木材編』
植栽から30年〜60年ほどかけて立派な樹木へと成長します。
収穫期を迎え伐採されたものが、木材として住宅や公共建築物などの材料となり使われています。
・歴史的建造物:法隆寺や伊勢神宮、姫路城などの柱や梁
・現代の建築:国立競技場や大阪・関西万博の木造リングなど
新旧どちらも日本の木材文化の象徴であり、持続可能な資源として現在も活用されています。
木材の環境貢献(脱炭素の役割)
木材の製造工程は、植栽から伐採時期まで約30〜60年、伐採の準備をして実際に山から市場に出てくるまでに約6ヶ月、丸太から角材になり乾燥するのに約2ヶ月〜3年間、仕上げの成形と研磨を行います。
ざっと、樹木の成長に30年以上、収穫と製造に1年弱〜それ以上かかります。
(※ 地域や業者により、期間は前後します)
木材として使える段階になるまでに、果てしない時間がかかっているのです。
ですが、時間がかかるなりに、樹木は成長していく中で「炭素」を木材として蓄積します。
少しわかりやすく説明すると、 木が成長して太くなる=炭素が蓄積する ことです。
樹木は成長の過程で二酸化炭素(CO2)を吸収し、炭素として体内に蓄えます。木を切り出して建物として使い続けることは、炭素をそのまま固定し続けることにつながり、地球温暖化防止の一助となります。「木を使うこと」は、実は環境を守ることにもつながっているのです。
最近の環境思考で「脱炭素」という言葉がありますが、これは二酸化炭素の排出につながる行動を最終的に無くしていくことを目標にしているものです。
木材は燃やせば二酸化炭素が排出されますが、逆に燃やさなければ排出されることはありません。
木を切り出してから建物や道具として長く使い続けることは、炭素をそのまま固定し続けることにつながり、地球温暖化防止の一助となります。
「木を使うこと」は、実は環境を守ることにもつながっているんです(※)。
(※ 森林から木を切る代わりに、伐採後の土地には次世代となる苗を植える(植林)必要があります。気候豊かで植物の成長が活発な日本だからこそ、植林をすることで持続可能な人工林の利用が可能となります。)
3、飛散する花粉の正体ーなぜ遠く離れた都市部まで花粉が届くのかー
「近くに山がないのに、なぜ都会でもこれほど花粉が飛ぶのか」と疑問に思う方は多いと思います。
その理由は、スギ・ヒノキの生態的な仕組みと、日本列島を吹く風にあります。
スギやヒノキは受粉に必要な花粉を風に乗せて運びます。
子孫を残すために大量の花粉を撒き散らし、それが風に乗って数十〜数百キロ先まで運ばれます。

スギ・ヒノキは樹齢が上がるほど花粉が多く生成されると言われています。
木が若いときはエネルギーを成長に集中させ、成長期が終わると繁殖にエネルギーを振り分けることで花粉量が増えることになります。
この情報を知ると、春先に山を見るだけで花粉の塊に見えてしまう不思議。笑
花粉症の人は(私も)鳥肌ものです。汗
日本の上空には、西から東へと強く吹く「偏西風」があります。
この風は黄砂やPM2.5を海外から運んでくるほどのパワーを持っており、国内の人工林で発生した花粉を都市部へ運ぶのは容易いことです。
スギは全国、ヒノキは東北南部以南に広く分布しているため、日本中のどこにいても逃げ場がないのが現状です。

「全国に生息するスギ・ヒノキの人工林」、「偏西風」の存在が日本人を困らせる花粉症の正体です。
4、日本が進める「花粉症解決」への地道な努力
服用する薬やマスクの着用での花粉症対策は、一般の皆さんができる精一杯の対策だと思います。
ですが、実はスギやヒノキの森林に関わる国や研究機関、林業関係者は「花粉を減らす」ための対策を継続的に進めています。
無花粉苗、少花粉苗の開発、植栽
食品同様、樹木にも品種改良という概念が存在します。
1990年ごろから、花粉を全く出さない「無花粉スギ」や、飛散量が極めて少ない「少花粉スギ」の研究開発が本格化しました。現在では、伐採した後にこれらの苗木を植え替える取り組みが進んでいます。例えば和歌山県などでは、2035年までに供給するすべての苗木をこうした品種に切り替えることを目指して活動しています。
森林整備(放置林対策)
適切に手入れがされていない「放置林」も花粉量爆増の一因です。
前述したように、樹木は加齢によって成長が落ち着くと、生存本能から花粉の量が増える傾向にあります。
また、密集しすぎて栄養状態が悪くなった木も、子孫を残そうと必死に花粉を作ります。
全国の林業事業者は、補助金を活用しながら間伐・主伐・再造林などの整備を行い、花粉の少ない健全な森づくりを続けています。

品種があるなら早く効果を期待したいですね!
しかし、成長に時間がかかるために効果が現れるのはもう少し先になるかも、、、。
研究が進んでいるなら、まぁ良し!
未来の快適な環境を期待して待てる、気の長い人間になれるように精進したいと思います!!
5、まとめ
「花粉をなくすために木をすべて切る」ことは、土砂災害の防止や温暖化対策の観点から現実的ではありません。
しかし、今ある木を計画的に伐採して利用し、花粉の出ない新しい品種へ植え替えていく「循環」こそが、将来の花粉症解決への確かな道といえます。
樹木の成長には数十年という長い年月がかかるため、すぐに効果を実感するのは難しいことが難点です。
しかし、林業の担い手不足といった課題を抱えながらも、着実に未来に向けた技術開発や整備は進んでいます。
私たちにできることは、こうした背景を正しく理解し、国産の木材を積極的に利用するなどして、日本の森の循環を支えていくことだと思います。
花粉の少ない未来を期待して、前向きに見守っていきましょう!!!
参考資料
・林野庁:スギ・ヒノキに関するデータ
・林野庁:森林資源の現況(令和4年3月31日現在)
・読売新聞オンライン:花粉少ないスギ・ヒノキ、研究続く
・進研ゼミ高校講座:偏西風や季節風の違い
・環境省:花粉症環境保健マニュアル2022



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